親は子育ての過程で子供の将来を案じて、様々なことを子供に試みます。
子育てにおいて、或いは子供の数ある能力において、何をどのように伸ばし
てあげれば良いのか?議論の分かれるところだと思います。
子供の早期教育、過熱する習い事や塾通いもその一例といえるでしょう。
親はしばしば子供に対しての期待というよりも、過剰な「将来不安」により、子
供に対して様々なことを望みます。しかし、それは期待しているのではなく、不
安からくる期待といえます。「こうなって欲しくない」「ああなったらどうしよう」と
いう気持ちです。過剰な期待というのは、その動機が「不安」からくるものであ
り、受け取る子供からしてみれば、愛情というよりプレッシャーと感じているで
しょう。

子供の将来を考えるならば、私は大きく二つのことを大切にしています。
一つは職業を通じた自己実現。
もう一つは人間関係の能力です。

自分の能力と適正、そして価値観に一致した職業に就き、そこで能力を発揮し
たりやりがいを感じ、自己実現を果たすことです。職業自体が安定していると
か、収入が良いということは、その次にくる選択であって、先ず自分自身が自分
に対して誇れる仕事かどうかということが、大切なのです。
人に誇れる、評価されるとか、高学歴高収入という要素は、人生の主目的には
なりません。それは、人に自慢する「ブランド」です。
本来自己実現というのは、自分自身に誇る「ブランド」でなくてはなりません。

また、どんな仕事に就くにせよ、どんな人生を選択するにせよ、人と関わらない
で生きていくことはできません。人と共同して仕事をしたり人と付き合ったり結
婚したりするのですから、知的な能力とは、そうした対人関係の力の上に初め
て役に立つものだと思います。
私も若い頃は、そういうことがわからず、能力というものに固執していましたが、
「人間、能力よりも人柄が大切なんだ」ということがわかるようになってきまし
た。アメリカの研究によると、職場のトラブルや問題の実に80%以上が「人間関
係」なのだそうです。また、人が悩むのも「人間関係」においてがほとんどではな
いでしょうか。

では、そうしたことを踏まえて、親として子供のどんな経験を大事にしてあげれ
ば良いのかを考えてみましょう。

子供が将来自分の好きな仕事、やりたいことを見つけるためには、幼い頃から
「自分のやりたいこと、好きなことを飽きるほどやる、のめり込む」
という体験が欠かせません。つまり、たくさん遊び込むということです。
ただ、大人から見れば、子供の熱中する事というの「くだらない事」が多いです。
アリの巣を見つけて、道路の端に座り込むとか、洗面台で手を洗いに行ったら、
そのまま水遊びを始めるとか、ゴミ箱の中味をひっくり返すとか、ティッシュペー
パーの中味を空にするとか、そうしたいたずらレベルも含めてです。
そうした事をできる限り「好きなだけ」やらせてあげるのです。程無くして子供
はそれらに飽きます。そしてまた別の対象を見つけ、のめり込んでいきます。
この繰り返しにより、やがて「将来は何々になりたい」といったことを思い始め
ます。それは、自分が好きな事をたくさんしてきたその「体験学習」により、
自分の能力や適正を把握し始めるからです。
そして大切な事は、親は、子供がこうしたことに熱中したり、自分の好きな事を
発見できた時に、一緒になって悦んであげることです。
親が自分の悦びに共感してくれることにより、子供は自分の感性と判断に益々
自信を深めることができるのです。
こうして自分自身の力で、自分のやりたいことを探そうとするようになります。

次に、人間関係の能力についてです。
結論からいうと、人間関係の能力というのは、人間関係の中でしか学べませ
ん。勉強したり、本を読んで身に付くものではないのです。
従って、幼い頃から友達と遊ぶ時間をできるだけ大切にしてあげることです。
そして、子供同士、大人を挟まずに遊ばせることが重要です。
子供同士だと最初のうちはケンカをしたり、上手く遊べないことも多いでしょう。
しかし、そこを子供同士でもみ合いながら遊ばせることで、子供は自然とルー
ルを作ったり、自分の要求を通したり譲ったりする術を学んでいきます。
意地悪な子がいても、そういう子にはどう対処しながら楽しんで遊べるか。
気の弱い子には、どう接してあげたら良いのか。そうしたことを、子供は子供か
ら学んでいくのです。大人が口で「仲良くしなさい」というだけでは足りません。
やはり「経験」させてあげることこそ、「教育」なのです。
そのためには、親自身も豊かな人間関係をもっている方が望ましいでしょう。
子供は親を見て育ちますから、人とすぐもめたり、人のことをすぐいいだの悪い
だのと批判する親が、口先だけで「仲良くね」と言っても、全く説得力がありま
せん。
また、大人になってから対人関係で悩む人というのは、そのほとんどが子供
の頃にそうした「人間関係」を学ぶ機会が少なかったことが原因といえます。

子供たちは今、非常に忙しい生活に追われ、遊びこんだりケンカしたりする時
間を持てません。塾や習い事は、それはそれで得るものもたくさんあります。
そうしたものに通わせる必要は無いとは、私は思いません。
しかし、物事何でも偏ってしまうと、いい結果を生みません。塾や習い事は、こ
れは全て「大人からしか学んでいない」ということになります。
大切なのは、子供同士で学び合うことです。
育児書をいくら読んでも、人間関係という「実体験」が伴わなければ、意味があ
りません。

塾よりも遊びを、育児書よりも友達をもっと優先させましょう。




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【塾よりも遊び、育児書よりも友達を】