
-親子の信頼関係を構築する-
私は人が社会に出て様々な人間関係や環境の中で自立してやっていく
には、人に対する基本的な信頼感とでも呼ぶべきものが、非常に重要に
なってくるのではないかと思うのです。自分を信じる、人を信じる、未来を
信じ、自分の人生を邁進していく。そのためには、どれだけ多くの事を信じ
切れるかが、勝負の分かれ目だと思うのです。
しかしこの「信じる」という気持ちは、なかなか頭で考えてできるものでは
ありません。物事を信じ切る、人を信じ切るためには、知恵と勇気と幼い頃
からの「信頼されて育った」という実体験が必要になります。
どんな自分でも受け入れてもらえたという悦び、自分のいろんな感情に深
い共感をもらったという気持ちの良さ、そして、無条件に愛されてきたとい
う自信。
これらが揃ってはじめて人は自己実現に向かって歩んでいくのです。
では、親子の信頼関係を構築する上で、親としてどのような心構えでいれ
ば良いでしょうか。
人は本来、信頼されると、それに応えようとする生き物です。
従って、親子の信頼関係を創るには、先ず親が子供を信頼することが重
要です。子供よりも親から先に、信頼のサインを送ることです。
それも、子供が親に向けて送ってくれる信頼の量の100倍くらいの信頼が
必要になります。子供にしてみれば、親から愛されるのは当然のことと思っ
ているので、中途半端なサインでは、子供には受け取ってもらえません。
-子供は親を試している-
子供というのは、実は要所要所で親を試しているのです。
わたしも最近そのことに気がつきましたが、ほとんどどの子も親を試します。
乳児の頃からこの試しが始まっているのです。そして幼児、学童期ときて、
ここまでで自分の試しを親が次々にクリアしていけば、それ以降は子供の
試しも急激に減少していきます。
ところが、乳幼児期から小学校低学年までの子供の試しを親がクリアできな
いと、子供は中学生、高校生になっても、場合によっては30歳、40歳にな
っても、親への試しを継続します。しかも、その度合いは年齢を重ねていく
ごとに、どんどんエスカレートしていきます。(例、不登校、いじめ、家庭内暴
力、引きこもり、摂食障害、非行、窃盗など)
では何故、子供はそこまでして親への試しを敢行するのでしょうか。
理由はこうです。
子供と言うのは、親との間でしっかりとした信頼関係を築けないと、自分の
将来が危うくなることをわかっています。そして、本来動物の親というのは、
我が子のことを、命がけで敵から守るものです。ですから、子供は親が自分
の命を守ってくれるかどうかを、試さずにはおれないのです。
しかも、自分の命、人生、未来がかかっているのですから、まさに全力で
親を試すわけです。
従って、そうした我が子の問いかけに応えるには、前に書いたように100倍
の信頼をもって応えてあげなくては、子供から合格証書はもらえません。
-我が子の試しをクリアすることに悦びを-
では主にどんな試しを試みてくるのか、順を追ってみてみましょう。
先ず、赤ちゃん(乳児)の時です。赤ちゃんは、泣くという行為で様々な不快
を親に取り除いてもらおうとします。空腹だから、お乳が欲しい、おしめを取り
替えて欲しい、不安だから抱っこして欲しい、暑い(寒い)から快適にして欲
しいと、次から次へと要求してきます。親はこれらにしっかりと対応し、先ず
は子供の最初の試しをクリアします。
続いて幼児期に入ると、子供はいたずら盛りです。口に物を入れたり、ご飯
をひっくり返して遊んだり、ティッシュやゴミ箱の中身を全部出したり、好奇心
旺盛です。足元が危ない所にわざわざ行っては怪我をしたりします。
この時、親が慌てず落ち着いて見守っているか、おどおどしたりすぐに叱り付
けて自分の行動を押さえ込んでしまうか、それを子供は試します。その反応を
記憶するのです。
もし、親がその行動を面白がったり楽しんでやらせてくれたら、子供は合格だ
と思うでしょう。しかし、危ない時にいかに迅速に自分を守ってくれたかも、
しっかりと記憶します。
次に、だいたい4〜5歳くらいから、子供は親にある難題をつきつけて、試し
を試みます。それは「わがまま」です。
親が自分のわがままをどこまできいてくれるかで、子供は親への試しをひと
まず完了しようとします。ですから、「わがままばかり言って」とか「言うことを
聞きなさい!」と言って、子供の我がままを最初から押さえつけたり取り合わ
なかったりするようでは、その時点で不合格になります。
かといって、わがままを一から十まできいても、子供は親を不合格とみなす
のです。自分のわがままをできるだけ聞いてくれる。自分の要求をできる限り
満たしてくれることで、子供は親への信頼感と、自分自身に対する信頼感を
同時に手に入れることができるのですが、あまりに理不尽だったり、むちゃく
ちゃなわがままの場合は、「ダメ」というサインを出してくれることも、子供は
期待しているのです。
例えば、親のことをつねって顔色を伺ったり、忙しい時に抱っこをせがんだり、
外で一緒に遊んでいて「帰るよ」と言うと「まだ遊ぶ」とダダをこねたり、ある
いは親が嫌がることをわざわざしてみせたり。
その時の親の態度を子供は試しています。つまり、親自身の思い通りにいか
ないことや、親の嫌がることをわざわざやってみせて、それでも親が動ぜず
に、落ち着いてゆったりと構えていられるかどうかで、子供は親の自分への
信頼感が揺るがないかを試すのです。
従って、親はこの子供の試しに、悦んで試されるくらいのゆとりがほしいとこ
ろです。
子供が親である自分を試すことによって、自分の未来への信頼感を必死に
築きあげようとしていることに、愛着と愛おしさを感じ、子供に試されるという
ことに、親としての悦びを覚えましょう。
そして、親自身も自分の知恵と勇気と愛を総動員して子供に付き合い、子供
と一緒になって成長できる素晴らしい時間だと思って、子供の試しに応えて
あげましょう。子供が自分の人生を歩んでいけるようなわがままを見極め、
基本的な信頼感を築いていきたいですね。
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