察するということ(小学生の事例)


私は小学校のスクールカウンセラーとして、先生のカウンセリング、保護者のカウン
セリング、そして、生徒児童(小学生)のカウンセリングも行います。
先生の場合は、相談室でカウンセリングをするというよりも、職員室で雑談という形
が多くなります。時々「鈴木先生、一緒にコーヒー飲みませんか?」と言ってコーヒー
を持ってきてくれたりする時は、その先生の「話を聞いて欲しい」という合図だったり
します。そこで30分くらいクラスのこと、気になる児童のことや、先生自身が頭や胸を
痛めていることをお話ししてくださいます。

カウンセリングとか相談というよりも、雑談といった形にはなるわけですが、そういう
お話をじっくりと聞くということも、スクールカウンセラーの大切な役割なのではないか
と、最近思うようになりました。

小学生の児童のカウンセリングの場合、私が心がけていることは二つあります。
一つは、子ども扱いしないこと。特に、高学年(5・6年生)の女子生徒の場合は、
もう大人のレディーを扱うような態度で接します。
その反面、もう一つは、幼児をあやすような暖かい気持ちで話を聞くことです。

そしてそして、どんなカウンセリングでもそうなのですが、どんな子どもに対しても、
限りない肯定的な気持ちと信頼感をもって接すること。特に、子どもの場合は最初
が肝心です。第一回目の面接や、最初に接する機会・場面が勝負であり、ここで
信頼関係を築けたら、彼らは自分の内面を素直に語り始めます。

大人にくらべて小学生などは、ある意味、明瞭に内的経験を言葉にできます。
ですので、そういう意味でも最初が勝負なのです。もし、その最初の段階で不信感
や違和感を少しでも持たれたら、そこから信頼関係を回復するのは、極めて難しい
でしょう。
そういった意味でも、私としては、校庭や廊下や職員室で交わす、何気ない子供た
ちとの会話においても、その一言一言がとても大事であり、疎かにすることはでき
ません。たった一言のやり取りで、不信感や違和感を持たれてしまう。そんなことは、
決して珍しいことではありません。

例えば、こんなことがありました。

学校でやや荒れ気味の六年生の男の子と私は休み時間にキャッチボールをしてい
ます。その日も休み時間になり、私が校庭の端を歩いていると、後頭部にポーンと
ボールがぶつかりました。振り返るとその子が、後ろから私にボールを投げたのです。

側にいた先生は、それを、私に代わって注意してくれました。私に代わってというの
は、私がそれを注意しなかったからです。注意しない私をその先生がどう思ったかは
わかりませんが、その時、私は心の中で、次の事を考えていました。

先ずこの子は、その時まだ、私にキャッチボールしようと言葉で伝えることができなか
った。本当は言葉で「先生、キャッチボールしよう」と言えるのが望ましいのですが、
その時のその子は、まだその段階までいっていないわけです。

これは何を意味するかというと、その子の内面的な成長の段階という問題もあるし、
私とその子の関係が、まだそのレベルだということです。

そこで私はどう反応すればいいか、一瞬の間に葛藤していました。
「そういう時は、言葉でキャッチボールしようと
言えると、先生はうれしいんだけどな」という対応が一つ。
言葉で自分の気持ちを伝えるという方法を促すわけです。

しかし、私はこの子はもう一つ手前の段階だと判断しました。

つまり、ボールをぶつけたことで、この子は私に自分の意図を察して欲しいという気
持ちもあるわけです。まだ、言葉で素直に自分の気持ちを伝えられない。そういう
不器用な自分の今の心の状態を察してほしい。ならば、この場合は、こちらが察して
あげる段階になる。

そう判断した私は、こう言いました。

「よし。やろうか」

ちなみにここで「キャッチボールしたいの?」と言ったら、どうでしょうか。
それでは、「当たり前だろう。先生鈍いな〜」になってしまいます。

ここは、あなたのキャッチボールしたいという気持ちを私は十二分に承知している、
心得ているよというこちらの思いをストレートに伝える必要がありました。そこで、
「言葉で言って欲しいな」でも、「キャッチボールやりたいの?」でもなく、「よし、や
ろうか」となるわけです。

もちろん、その子は嬉しそうな顔をしました。

そして、次の週に私を見つけると、「先生、またキャッチボールしよう」と、今度は私
の目を真正面から見据えて、言葉で自分の気持ちを伝えてきました。もちろんその
時、「よく言葉で伝えられたね」なんて野暮ったい言葉は要りません。

「わかった。じゃあ、休み時間にね!」

笑顔でそう応えるだけで、もう充分でした。

彼とそこまでの信頼関係を築くには、半年かかりましたが、ここまでくれば、そう簡単
にこの関係が崩れることはないといえるでしょう。



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【執筆者プロフィール】
鈴木雅幸:ハッピーライフ実践会 代表/ 心理カウンセラー
 
若い頃から様々な自己啓発書、心理学、カウンセリング書、ビジネス書、メンタルな書物を
読み続け、2001年11月、しあわせ研究室「こころの森」を立ち上げ、数多くのレポートを
アップし、同時にメール相談も開始し、サイト訪問者から高い評価を得る。
その後、さらに本格的にカウンセリング活動を続け、2004年7月には、ハッピーライフ実践会
を立ち上げ、代表となる。
実践会の会員は、2006年1月現在、1000名を超え、他に例のないインターネット通信講座
やe-bookセミナーを企画・販売している。
現在もカウンセリング通信教育を中心に、精力的な活動を行っている。
1967年生まれ、二児の父親でもある。

http://www.counselinglife.com

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