私たちはよく、相手の言葉やその内容にすぐに反応してしまい、その言葉に対して
返答してしまいます。
そしてそうしているうちに、いつの間にか相手との心の距離が少しづつ離れていく
のを感じます。しかし、そう感じていながらその距離を戻す術を知りません。
いったんあいた距離や、心のみぞというものは、なかなか簡単には埋まりません。

親子の間の距離、夫婦の間の距離、恋人同士や友達との距離。
人間関係の距離というのは、近すぎるとヤケドしますが、遠すぎても具合の悪い
ものです。
心地良い距離というのは、お互いが気持ちよく、一緒に居ることで励まされます。
では、その距離を維持していくには、どのように接していけばよいのでしょうか。

これは一概にはいえません。様々なことが考えられると思うのですが、私は相手
の気持ちをくみ取るということは、とても大事な事の一つと思うのです。
例えば子供が親に悪態をついたとか、弱音を吐いたり、愚痴をこぼしたりした時、
我々大人はどうしているでしょうか?
おそらく、悪態を注意したり、弱音を吐かず強くなれと言ったり、また、「こうしたら
どうだ、こう考えたらどうだ」とすぐに答えを言ってしまっていませんか?

ある不登校の子供が、
「お父さんはすぐに答えを僕に押し付けてくる。
でも、僕はただ、弱音を聞いて欲しかったんだ。ただ、辛い気持ちを受け止めて
欲しかったんだ。答えなんか要らないんだ。」
と訴えていたそうです。

弱音や愚痴というのは、私はそこにその人の本音がくっついてくると思っていま
す。弱音や愚痴の内容を聞いてしまうと、確かに答えを返したり励ましたりしたく
なってしまいます。
しかし、その内容ではなく、それを「どんな気持ちで言っているのか」ということが
大切なのです。
人間の言動には、必ず理由があります。そこに「何故?」という気持ちをもって、
聞いてあげることで、その人との心理的距離に信頼関係が芽生えます。
「そうか、辛いことがあったんだな。お父さんも、もしそんな事があったら嫌だな
あ。」
こんな風に受け止めてくれるだけで、子供は癒され、自力で物事を解決し、前に
進んでいこうとします。
人間と言うのは、弱さを丸ごと受け止めてもらったり、その弱さを否定されずに認
めてもらえた時、本当の「強さ」を身につけていけるのです。
そして、そうした関係の中から、人を信頼していくことを学んでいくのです。

自分の中にある弱さ、愚かさを認めていく。
「こんな自分でもしょうがない。しばらくはこんな自分でもいい。誰だって100%の
完璧な人間なんていない。その事を人に指摘されたらその通りだと言えばいい。」
こう思い直すことが、思いがけない変化を生むかも知れません。



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気持ちをくみ取るということ